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10/12 RR 要約・コメント

ポスト9.11からポスト・スノーデンへ-テロ監視対策

                   井桁大介(弁護士) 

-ポスト9.11時代

9.11テロがポスト冷戦時代を終結

  →多くの国でテロ対策予算が創設

   Ex.)アメリカ合衆国 9.11後、750億$/年が上乗せ

テロ対策が神聖視

  →大規模な監視プログラムの発生

 

1.アメリカの監視政策

  • NSAによる大規模監視プログラム

2013年 スノーデン事件

  米国家安全保障局(NSA)元外部契約社員

エドワード・スノーデン容疑者が暴露した事件

  米国家安全保障局(NSA)が

①米通信会社から膨大な通話のデータ

②インターネット企業から特定の通信内容  を監視

 

PCLOB (Privacy and Civil Liberties Oversight Board)がNSAの問題検証

 上記の①は、何も成果がなかった→やめるべきと判断

  上記の②は、いくつかのテロ予防に成功→有効、適切と判断

   →2015年 USAFREEDOM法 NSAの監視制限

 

ポスト・スノーデン時代の象徴

 監視プログラムの公表

 ↓

 第三者の専門家が検証、包み隠さず報告

 ↓

 法改正

 →テロ対策へのトランスペアレンシー(透明性)、第三者の検証が鍵

 NYPD イスラム過激派は信仰心の強いムスリムの組織→監視

  ↕

 人権NGO(ACLU=アメリカ自由人権協会)

  ニューヨーク州ニュージャージー州で訴訟→監視の中止

 

  • アメリカは監視天国?

 米連邦捜査局(FBI)、NSA

  general counsel(法律家最高責任者)

コンプライアンス・オフィス(法律,企業倫理の遵守)

Inspector general(違反取り締まり責任者)

司法省

National Security Division(国家安全保障課)

ホワイトハウス

 PPD28(大統領政策指令28号)

上院,下院

 インテリジェンス委員

PCLOB,FISA(外国諜報監視法)

 

  • 監視対策の困難さ

 前述の監督制度でテロを完璧に防ぐことは不可能

  ↓

 人権侵害,予算の浪費,無能な機関設計,過度な権限付与,権限の濫用の問題

                ⇓

           厳重な監督制度の必要性

 

2.日本の監視政策 

  ・2010年10月、公安情報流出事件によりイスラム教徒の監視政策があきらかになっ 

   た。 

  ・イスラム教徒、OIC(イスラム協力機構)加盟国出身者であれば監視の対象。 

   *OIC(イスラム協力機構

    イスラム諸国の連帯強化やイスラム教徒の独立闘争支援を目的とする国際機

    関。1971年創設。【コトバンク】 

   ・NYPDのものと瓜二つだったが、裁判所の判断は正反対。

    →「モスクを監視するなどしなければテロを予防できない」と断言。 

    ・東京高裁および最高裁判所の判決により、日本ではムスリムであることを理由

             に監視することを是認。 

   ・国際社会は日本の判決を批判。ポスト・スノーデンの時代において異常な判

    決。

     →このような監視捜査にはテロ予防効果がないとする研究成果や他国の裁判

      例は存在していた。 

  • 裁判所がそのような判断に至った理由 

  ・裁判所による監視プログラムの有効性の検証がおろそかであった。 

  ・証拠でなく妄想で補ってしまった。

   例)イスラム過激派がテロを起こしているという事実。

     イギリス、カナダの二か国において、テロリスト勧誘がモスクで行われた。

      →ドイツでの大量監視(マス・サーペランス)はテロ情報の収集は一件も

       無かった。 

  • 検証と情報公開が機能していないことの弊害 

  ・無駄な監視が生き延びるために予算と労力の利用効率が悪化し、真に有効な対策

   が不十分になりうる。

    →人命をないがしろにする姿勢。 

   ・ムスリムであることを理由に監視しているという事実さえも否定する警察に対す

       る不信感。

    →テロ予防の効果を毀損する姿勢。 

  • 適切な情報公開と検証作業の重要性

  ・国際社会はポスト9・11からポスト・スノーデンへ。

   ・日本の対応は、国際社会の時代の潮流から取り残される。

    →具体的な公開情報に基づいた議論をすることが重要。

    →2020年に控える東京オリンピックへの影響。

 

スレブレニツァで考えたこと

ボスニア紛争、デイトン和平合意が問いかけるもの―

                         長有紀枝(立教大学)

 

1.二十一年目のスレブレニツァ 

 *スレブレニツァ ―ボスニア・ヘルツェゴビナの小村。 

 *スレブレニツァ事件 ―二十一年前(1995年)の夏に起きた。

             「第二次世界大戦以来の欧州で最悪の虐殺」。

             「ナチ・ジェノサイド」「アウシュビッツ」と同義語。 

 *ジェノサイド ―一つの民族の破壊を指す用語。

  一つの集団の全部または一部を破壊する明確な「意図」をもって行われる犯罪。

         genos 民族、部族

         cide  殺害 

2.ボスニア紛争で発生したジェノサイド 

  ジェノサイドは平時にも行われる犯罪→戦争とは関係ない               

              ↓ 

  ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争(スレブレニツァ事件)によってジェノサイドと

  武力紛争が密接なかかわりを持つ 

 

 紛争前のボスニア・ヘルツェゴヴィナ

  ・イスラム教徒のムスリム人 44%

  ・正教徒のセルビア人    31%

  ・カトリッククロアチア人 17%

                   からなる多文化社会

  ・三民族は政治的にも物理的にも三分割が不可能 

 

 1991  ユーゴ解体

        ↑

      クロアチアセルビア人反対

      しかし国民投票により独立が賛成多数

      反対派 セルビア人 VS 賛成派 ムスリムクロアチア

 

 紛争により包囲されたスレブレニツァ

  ナセルオリッチ率いるムスリム人勢力により多数のセルビア人も犠牲になった

 

  1995年11月 ボスニア戦争が終了

         ↓

      ディトン合意でボスニア・ヘルツェゴヴィナボスニア連邦をセルビア

      共和国の2つの主体となった

      現在も多民族・多宗教・多文化という多元的社会からなる一つのボスニア

      を今現在も目指している。

 

 4.普通の人による犯罪とコラボレーター 

  OHRの度重なる要請にセルビア人共和国のブレニッア事件発生後に関与した名簿を

  提出→10年後に約二万人がムスリム人殺害遺体処理に関与が明らかになった 

  戦争が模範的な国民であり愛国者である人物を残虐非道なジェノサイドの首謀者に

  変える(ムラディチ)

 

5.ユーゴスラヴィア人、ボスニア

   ユーゴラスヴィア人…既存の民族を超える新たなユーゴ統合の政策概念

  ボスニア人(ボシュニャワ)…上記と同様に時の民族政策や政治状況と密接に関連

  する概念 

  社会・経済的にボスニア連邦内に住むセルビア人系住民にマイノリティとして政治

  経済的な差別を受けた

  他方、セルビア人共和国内にくらすクロアチア人やボスニア人も同様な差別を受け

  た 

  いずれの民族にも属さないボスニア・ヘルツェゴヴィナ人の誕生

 

6.おわりに 

  現在のシリアの統治の手法

      ↑↓

  ボスニア紛争同様の民族・宗派浄化 

  この強制的な手法でしか停戦はできなかったのか?

 

 ・9.11後のアメリカではテロ対策のため、人権を侵害する監視がなされていた。国民はこれに対しアメリカ政府を批判したが、一方的に政府が悪いとは言い切れないと思う。もし監視方法を公表してしまったら、テロリストたちはほかの手段を使うことになり、テロを止めることができないからだ。テロ対策はとても難しいものであり、なおかつ、国にも法にも重要であると改めて認識した。

 ・非常にNYPDと類似した監視政策を行なっているにもかかわらず、日本の裁判所の対応、警察の対応には驚いた。そのような対応をしたのは官庁など国の上に立つものであるが、この問題点は日本国民すべてに言えるものでもあると考える。基本的に無宗教であるとはいえ、日本全体の宗教に対する理解力があまりにも乏しいのではないかと思う。2020年には東京五輪で世界各地から、様々な人種や宗教を持った人々が日本を訪れるのだから、国際社会から非難を浴びないように日本人全体の意識を変えていくべきだと思う。

 ・今のシリアで起きている紛争と昔にあったボスニア紛争がほとんど同様な内容であった。民族・宗派浄化というものを原因として起きるこの紛争そして、強制的な手法でしか停戦はできないと学んだ姿が見られないので、現在の紛争を起こしている人々にこのボスニア紛争の歴史を伝えるべきではないかと考えた。

参考文献

井桁大介. "ポスト9・11からポスト・スノーデンへ”. 世界. 2016, No.887, p.94-102

長有紀枝. "スレブニツァで考えたこと”. 世界. 2016, No.887, p.103-111